紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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  <紀伊半島の巨木を訪ねる>

 三重県伊勢市  伊勢神宮内宮の神宮スギの大木、大クス

 三重県伊勢市の五十鈴川のほとりにある伊勢神宮の内宮には、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が祀られている正宮がある。内宮の宮域は全体で5,500ヘクタールの広さ(後楽園球場1,176個分)があり、社殿を中心とする93ヘクタールの神域と山林を中心とする広大な宮域林に区分される。

 五鈴川にかかる宇治橋を渡り、玉砂利を踏みしめて内宮の参道を歩いて行くと、両側に緑豊かな社叢林が広がる。神域の社叢林は伐採が禁じられていて、暖帯北部の天然林の林相を示し、カシ、シイ、クス、マツ、ヒノキ、サカキなどの中に幾本ものスギの大木が見え隠れする。緑深い社叢林の中の道を歩みながら、鎮守の森は、縄文、弥生、古代に生きた人たちが、森林、巨木などに対して恐れや畏敬の念を抱き、自然崇拝、精霊崇拝の対象としてきたことに源流を持つのではないかと想像する。忙しく、騒がしい現代人にとっても、広大な森林の中の参道を玉砂利の音のみを聞きながら心静かに歩むときに、古代の人たちの想いを一瞬でも体験できる気がする。

 正宮に向かう参道には鉾杉と呼ばれるスギの大木が幾本も参道の中に立っている(写真上2枚)。鉾杉の幹には、竹製の保護材が巻かれている。伊勢神宮内宮には皇室の祖先神が祀られていることから、昔から歴代の天皇が樹齢500年から1000年と推測されるこれらの鉾杉の下を通り参宮したことに思いを馳せ、絵巻物の中の歴史の光景を思い起こす。これらの大きな鉾杉には歴史を感じさせる力がある。

 伊勢神宮に生育するスギは「神宮スギ」とも呼ばれ、「三重県の木」に指定されている。ちなみに、三重県の花はハナショウブである。

 鉾杉の他にも、参道の脇に2本の大スギが合体してできた巨大なスギや、前述のように天然林の奥に大スギが見える。

 参道沿いに、クスの大木(写真3枚目)やケヤキの大木も見られる。

 伊勢神宮内宮の神域では樹木の伐採は禁じられていることから、その樹相は天然林の姿を残していると考えられる。したがって、この地域において、天然の状態で樹齢が長く、大木となり易い樹種としては、スギ、次いでクスノキ、ケヤキなどが挙げられるであろう。
 
(写真をクリックすると拡大します)

伊勢神宮内宮の参道に立つ大きな鉾杉。樹幹には保護のための竹製の保護材が巻かれている。人と比較すると幹の太さが分る。
伊勢神宮内宮の参道に立つ大きな鉾杉。
伊勢神宮内宮の参道の脇に生育するクスの大木。その奥には杉の大木が見える。
伊勢神宮内宮の参道から天然林の中を撮影する。常緑樹が多く、林床に木漏れ日が差していて、適度に明るく、スギの人工林のような暗さはない。

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